産後の「役割の変化」がストレスになるとき
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産後うつ予防のために産前からの産前産後ケアを大切に、多職種連携チームで活動している一般社団法人全国産前産後バースケアラー協会です。
「産後のストレス」と聞くと、寝不足、頻回授乳、赤ちゃんが泣き止まない、ワンオペ育児……そんな毎日を思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも産後のストレスは、体の疲れやホルモンバランスだけでは説明できないものもたくさんあります。
今日は、少し違う角度から「産後のストレス」についてお話ししますね。
産後に変わるのは体だけじゃない
出産で体には大きな変化が起こりますが、それと同時にもうひとつ大きく変わるものがあります。
それは、「役割」です。
独身の頃は、一人の女性として。
結婚すると、妻として。
妊娠中は、妊婦として。
そして出産後は、ある日突然「ママ」として。
母になる心構えはしてきたつもりでも、実際には経験ゼロのまま、休む間もなく「ママ」という役割が始まります。
祝福の中で感じる、言葉にできない気持ち
出産後は、両親や義理の両親、親戚などから
「おめでとう!」
「本当によく頑張ったね」
「赤ちゃん可愛いね!」・・・たくさんの祝福を受けます。
嬉しいはずなのに、なぜか心が追いつかない―そんな感覚を覚えたことはありませんか?
自分のペースで感じたり、考えたりする時間がないまま、周囲の期待や視線だけが増えていく。
まわりが明るく盛り上がるほど、自分だけが取り残されたような孤独や不安を感じることもあります。
それはそれまで「自分」や「夫婦」という小さな世界で生きてきたところに、一気に「家族」「親族」と世界の広がりに戸惑っているからなんです。
「ありがたいけど、今はそっとしておいてほしい」そんな気持ちになるのも、決してわがままなことではありません。
里帰り出産が、つらくなることもある
実家に里帰り出産をして「親孝行できた」「助けてもらえて本当に助かった」と感じる人もいる一方で、「想像と違った」という思いをする人も少なくありません。
たとえば、親と育児方針や価値観が食い違ってモヤモヤする―それは、出産前までは「娘」という立場で親に接していたのに、出産したとたん「両親の娘ではあるけれど、赤ちゃんのママでもある」という複雑な役割にうまく順応できていないからです。
自分の中の「親」の役割意識が芽生えて、変わらないと思っていた親との関係が少しずつ変化する―その些細な違和感をストレスと感じてしまうことがあります。
無意識の緊張の連続が「ツライ」に変わる
私が初めて出産したときのことです。義理の両親が遠方から会いに来てくれました。
ありがたい気持ちと同時に、「家を片づけなきゃ」「ちゃんとした格好をしなきゃ」そんな思いから緊張が続いた結果、母乳が出にくくなってしまったことがあります。
これは、義理の両親が悪かったわけでも、私が神経質過ぎただったわけでもありません。
産後の体と心はとても繊細で、環境の変化や「気を張る状況」そのものに影響を受けやすい時期だった、ただそれだけです。
同じように、保健師さんや民生委員さんの新生児訪問を「正直つらい」と感じるママもいるでしょう。
一度も会ったことが無い人に片付いていない家の中を見られるのは抵抗がありますし、「どんな風に思われるんだろう」と不安にもありますよね。
訪問する側は「そのままでいいですよ」と言ってくれても、産後のママは、人を受け入れるだけの心の余裕が残っていないことも多いのです。
出産は、うれしい。でもそれだけじゃない
出産はとても幸せな出来事です。
でも同時に、たくさんの役割と人間関係が一気に加わる、大きな転換点でもあります。
体の回復が追いつかないまま、心の準備が整わないまま、「ママ」としての日常が始まる。
だからこそ、知らず知らずのうちに、心も体もストレスを感じやすくなるのです。
もし今、理由のわからないモヤモヤやしんどさを感じているなら、それはあなたが弱いからではありません。
環境と役割が、一気に変わっただけ。
まずはそう捉えて、自分に少し優しくしてあげてくださいね。
